第9章 久々に血が騒ぐわ…!
「…その方が…お前は穏やかに暮らせるじゃないか…。」
「あぁ…。」
そういうことか…。
優しい人。
そして、悲しい人。
決して”自分”を優先しないんだもん…。
「私は…。ここに住むことで穏やかに過ごせるからって、それで満たされるとは思わない。」
私の奥底には、きっと見えない底抜け穴があるんだと思う。
だから、汲んでも汲んでも一向に満たされない。
きっと、永遠に満たされる日は来ないんじゃないかって最近思うようになった。
「私の幸せをイタチが決めることは出来ないよ。」
私がイタチの幸せを決めることが出来ないように、ね。
「悲しいかな。私はひとから用意された幸せを享受出来ないんだわ。」
綱手様やシズネさんが、それとなく私を止めてくれようとしてたのは気づいていた。
でも、私にはそれを受け止めることが出来なかった。
「だから、イタチも諦めて。ここに…イタチの傍にいることは、私にとって満たされる毎日だから。」
“幸せ”だとは、言えなかった。
きっと、嘘臭くなってしまうから。
だって、私達はもう…。
もう、昔みたいな関係には戻れないから。
斬不斬さん達と呑んでて気付かされた。
イタチの傷はどうしたって私じゃ埋められないんだってこと。
だって、イタチは私に兄ちゃんの面影を重ねてる。
イタチの中の負い目が消えない限り、私はイタチの傷をずっと膿ませることになるの。
でも、私は今、嘘偽りなく充実した毎日を過ごしてる。
約束を果たせてるって実感できるから。
イタチには悪いけど、私は”私”を優先するわ。
「エニシ…。」
「ごめんね。」
イタチと違って人間が出来てないから…。
私が困りながらも笑って見せると、やれやれと苦笑しながら頭を撫でられた。