第3章 久方ぶりの里帰り1
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あぁ、懐かしい声がする。
兄ちゃんの声。
イタチの声。
『エニシ、俺も結構忙しい身なのよ。』
『まぁ、そう言わずに。付き合ってくださいよ。それにカカシ先生が帰っちゃったら、テンゾウさんも帰っちゃうじゃないですか。』
『え、カカシさん、先生なんてやったことありましたっけ?』
あぁ、ここ…。
前に、うちは一族の移転先にって思って、なけなしの貯金で買った土地だ。
山奥の開けた平地。
それで、みんなに整備をお願いした事があった。
短期決戦、とばかりに一週間で整えようと思って、木遁使いのテンゾウさんに来てもらったのだ。
カカシ先生に上手いこと誘ってもらって。
『いいや、ない。こいつは勝手に俺を先生呼ばわりするんだよね。』
『私にとって、カカシさんは永遠に先生なんです。』
私が大真面目に答えると、はいはい、と面倒そうに相槌を打つ先生。
『何でか、昔からカカシさんを”先生”って呼ぶんだよな。その割に教えを乞うることは一度もなかったんだけど。』
あぁ、兄ちゃんもそんなこと言ってたなぁ。
声や顔がぼんやりしてる。
これは夢だね、って気づく。
『そういえばそうだな…。エニシ、何故なんだ?』
イタチはいつも細かい所にツッコミを入れるのよ…!
まさか、前世テレビで見たから、なんて言えるわけがない。
『え、いや〜…。何ででしょ?おほほ…。』
誤魔化されてくれないかしら…。
『ま、こいつの変さはいつもだからいいとして。ほら、ちゃっちゃと始めるぞ。』
カカシ先生ナイスです!
そうそう。
時間ないからさっさと整備に取り掛からないと!
『…で、僕は何で呼ばれたんでしょうか?』
いやいや、あんな便利な木遁使えるのに!
『もちろん!家を建ててほしいからです!』
この人がいれば百人力!
大工要らずじゃん。
私が、テンゾウさんの両手を握ってずいっと近づくと、仰け反られた。