第3章 久方ぶりの里帰り1
それから、夕方近くに宿を紹介してもらって、一晩泊まる事に。
野宿も考えていたくらいだったから、正直助かった。
助かった、んだけど…。
こんなにほいほいとついて行っていいもんでしょうか?
私は宿の人と話をするカカシ先生の背中を眺めながら、ぼんやりと考えてモヤモヤとしていた。
「一部屋空きそうだってさ。ここいいよ〜?一階には大浴場の温泉あるし、料理は美味しいし。」
振り返ってそう言ったカカシ先生は穏やかに笑う。
胡散くさい…って思っちゃダメかな。
めちゃくちゃ罠っぽいんだけど…。
「…ありがとうございます。」
目を逸らした私に、苦笑が降って来た。
「ホントに大した意図はないよ。俺はね。」
見上げると、困った様に笑って、首を少し傾げて掻いていた。
困った時によくしていた仕草だった。
“俺は”って言うくらいだから、他の人はあるんだろうな。例えば、あのゲンマって人とか。
けど、少なくとも先生は、親切心なんだろうなって事は信じられるかな。今ので。
私は軽く息をついてから、少し肩を竦めた。
「信じてますよ?カカシ先生。」
にっと笑って見せると、先生は困った様な少し嬉しそうな表情を浮かべる。
「こうやって見ると、まるで綱手様の親類に会った気分だな。」
「まぁ、似せてますからね。」
今は変化で姿形を変えています。
「その辺の事も聞きたいが…。ま、今度にしとくか。」
正直、そうしてもらえると助かります。
「誰が聞いてるとも限りませんしね。まぁ、時間が合えばって事で。」
「そうだな。じゃ、ゆっくり休めよ。」
先生はそう言って歩き出した。
「ありがとうございました。」
私が背中に向かって言うと、先生は振り向かないまま片手を上げて去って行った。