第3章 久方ぶりの里帰り1
部屋に案内されて入ってみると、ザ・和室のレトロな部屋だった。
丸テーブルに座椅子。
丸障子に和の絵が描かれた襖。
ただ、一つだけ和っぽくない格子窓の出窓があった。
「おぉ。意外に悪くない。」
観音開き?になっている窓を全開にすると、ひゅーっと風が吹き込む。
景色は悪くなかった。
三階だしね、ここ。
黄昏に染まる紺と赤っぽい橙に染まる空に、瞬きはじめる星々。
ぽつりぽつりと灯る明かりが、何だか綺麗で何だかちょっぴり寂しい。
…今頃、一族が健在なら私もあの中に居たんだろうか。
なんて…。
考えたって意味ないって分かってても頭によぎってしまう。
こんな時、一人ぼっちなのが身に染みた。
「…やめやめ。夕暮れを見るからそんな気になっちゃうのよ。」
私は一人で手足を軽くばたつかせて出窓を降りようとした。
その時、
「……。」
気づいてしまった。
「監視がいる…。」
それも一人や二人じゃない。
ざっと確認しただけでも七人。
けど、見てるだけだ。
仕掛ける気配がない。
「様子見、かな。」
お互いね。
もし、カカシ先生が、”女がエニシである”と報告したなら抜け忍として私を捕縛しに来るだろうし。
けれど、単に”怪しい人”ってだけなら行動を監視するだけに留まるはず。
怪しいってだけで仕掛けたら、単に里が一般人に危害を加えただけになるからね。醜聞が悪い。
ただねぇ…。
「夜、自来也様を探しに行こうと思ったんだけど…。」
こりゃ、無理だな。
里には歓楽街なんて少なくて、場所も限られてるから、探しやすいと思ったのになぁ。
「…よし!」
こうなったら潔く諦めて、おススメの大浴場でも行きますか!