第8章 暁に依頼します!
「きっと、兄ちゃんやイタチに会えない世界には未練ないんだね、私。ナルトやカカシ先生にも会えて良かったし。」
会えないけれど平和なままの選択肢と、会えるけど過酷な選択肢を提示されたら、私は迷いなく会える方を取るね。
「…たとえ、茨の道を歩むことになっても、か?」
「もちろん。今、『過去に戻れますよ』って選択肢を出されても、私はこの道を選ぶよ。兄ちゃんの妹になって、昔みたいに兄ちゃんとイタチと修行して、暗部に入って…。最後まで足掻くわ。」
「…どうして…?」
小さな問いに、私は胸を張って答える。
「会えないのが嫌だから。イタチにだって会いたいんだから。」
ちょっと照れ臭くて顔は見れなかったんだけど、嘘偽りのない私の正直な気持ち。
どんな道だろうと、私の選ぶ答えは今も昔も然程変わらない。
何度だって同じ選択をするよ。
「うわっ…!」
急に手を取られたかと思ったら、ぎゅっと抱き込まれていた。
「…なんだって…おまえは…。」
くぐもった声が布越しに聞こえて。
抱きしめる腕は頼りなく震えていた。
「…イタチ…。」
不安…だったのかな…。
独りぼっちの暗闇の道。
イタチの歩む世界は、きっとそういう世界だっただろうから…。
私は、そっと背中に手を回す。
私はここにいるよ。
傍にいる。
そんな想いを込めて。
少し身動ぎして、そっと胸に耳を当てると、トクっ、トクっ、と規則正しいリズムが聞こえてくる。
兄ちゃんの時と違ってちゃんと血が通ってて、目頭が熱くなった。