第8章 暁に依頼します!
なると大橋から、ちょっと東側へ移動した所に地元の人しか知らないプライベートビーチ的な所がある。
私も一応地元民扱いってことで、特別に教えてもらったんだよね。
「さすがに冬の海はちょっと寒かったね。」
「そうだな。だが元より温暖な所のせいか、他所よりは幾分暖かいな。」
「風も緩やかだしね。」
今日の天気は快晴とまではいかないものの、程よく晴れている。
周りに生えている木々が防風林みたいに囲ってくれてるおかげで、当たりはやや柔らいでいる。
水平線は遥か向こう側にあって、その前を船が行ったり来たり。
真夏に来たら、絵になる景色だったろうな。
「イタチは初めて海を見たのっていつ?」
「初めて、か…。確か、父さんに連れられて海沿いに行ったのがそうだったな。お前は?」
「綱手様に連れられてってのが初めてだから、十四歳くらい…かな。水の国に行く時に初めて見たんだ。」
「そうか。」
「イタチって海に憧れとかあったりする?」
「別にないな。エニシはあるのか?」
「あるといえばあるかな。前世含めて内陸部の生まれだからか、海辺の家ってちょっと憧れるな。」
「そういう、ものか?」
イタチは不思議そうに首を傾げた。
「なんかね、海はお出かけの時に行く所って感じがあってさ。前世では家族旅行で海にお出かけすることがあって特別な感じがするんだよね。」
親戚の家族旅行に同行させてもらって海に行くのが毎年夏休みの恒例だった。
そう考えると、今世で一回くらいは家族旅行を敢行すれば良かったかなって思う。
「何で忍やってる家って旅行とかしないのかな?」
そう。一回は「旅行しよう」って言ったことあったのよ。
だけど、「何言ってるの?」って逆に返されてカルチャーショックを受けたんだよね。
「それはそうだろう。忍が木の葉の外に旅行なんて行って万が一でも捕まったりしたらどうするんだ。」
わぉ…ごりごりの掟鉄則ですな。
イタチも兄ちゃんと同じような顔してるし。