第3章 久方ぶりの里帰り1
私は迷った末、嘘は言わない事にした。
「兄は、最期に…”イタチに託す”って言ってました。それに、影分身を寄越した時点で”毒にやられて助からない”って言ってましたから、手を下すまでもなく生きられなかったと思います。」
自殺幇助。
真相は多分そういう事なんだと思う。
いつか見た、悪夢の様に…。
文字通り、私は手も足も出ない所で兄ちゃんは死んだ。
「そう、か…。」
少し安心した様な、そんな呟きにも似た返しの言葉。
見上げると、ほっと安堵した様な、それでいて悔しさを綯い混ぜにした様な顔があった。
それを見て、迂闊にも涙が出そうになった。
何が解決したわけじゃないけど、イタチの一族殺しはそのままだけど、里の人に言葉が通った安堵感がハンパなかった。
話せば分かってもらえるっていう、当たり前の様で当たり前じゃない事が無性に嬉しかった。
私は慌てて明後日の方を向いて上を向いた。
何となく泣き顔を見られたくなかったから。