第3章 久方ぶりの里帰り1
今度は私がため息をつく番だった。
「それで最初から、ですか。参りました。」
私は降参のポーズを取った。
「で?私を引き渡します?」
里に捕まるなんてごめんだ。
最悪は先生との戦闘も覚悟せにゃ。
けど、先生は緩く首を横に振って、私から手を離した。
「言ったろ?昔のよしみが優先だって。それに仲間を引き渡したりなんかしなーいよ。」
にこっと笑ったその顔は、かつて一緒に仕事してる時によく見せてくれた優しい顔で。
なんだか拍子抜けだ。
「…私、抜け忍だったと記憶してますが?」
それでいいのか、里の誉。
「どうせ、ダンゾウ辺りに追い詰められた結果だろ?」
「知ってたんですか?」
ちょっとびっくりだ。
「考えれば分かる。あの時、お前が里抜けしたと”根”から大々的に報じられた。そのすぐ後にシスイが殺されたと報が入った。無関係じゃないだろ。」
カカシ先生の困った顔を見ていられなくて俯いた。
「えぇ…。」
客観的にでも兄ちゃんの事を聞くと、まだ感情が揺れてしまう。
「…兄のお陰で私は生き延びました。影分身を寄越してくれて、里の外に逃してくれましたから。」
自分の最期を悟った兄ちゃんは、本体はイタチの所へ行って、影分身は私の所へ来た。
私は何が何だか分からないまま、手を引かれ、里を離れて終末の谷まで直走って…。
何をどうすれば良かったのか。
あの時の正解を、私はまだ掴んでいない。
どうして結末を変えられなかったんだろうって。
助けられた事が正直、苦しい。
私が兄ちゃんを助けたかったのに…。
「…イタチが…、殺したって…。本当か…?」
酷く小さな、抑えた声の問いが降って来た。
心配…してたのかな、ずっと。
兄ちゃんと仲良かったの知ってるもんね…。