第8章 暁に依頼します!
エニシと同じ座敷席の、すぐ側の席に二人の男が向かい合って座っていた。
「中々手の内を見せませんねぇ。」
鬼鮫はイタチに話しかける。
二人は変化の術で姿形を誤魔化している為、三人に見咎められることはなかった。
「…俺は、そうは思わない。」
―エニシは隠し事が出来ない。
イタチの、彼女への認識は過去から現在に至るまで然程変わってはいなかった。
エニシの言動、行動、どれを取っても別段疑うところは何もない。
しかし、何かが引っ掛かっていた。
それが閊えとなってイタチの中に沈んでいる。
「いつになく浮かない顔ですねぇ。」
鬼鮫の言葉にイタチは、はっとして表情を消した。
「…あいつの事だ。何かあるのなら、その内ボロを出すだろう。」
―そうだ、当分は近くにいるのだから。探ろうと思えばいつでも探れる。
イタチはそう言い聞かせて、止まっていた箸を動かし始める。
後ろからは、楽しそうなエニシの笑い声が聞こえていた。