第8章 暁に依頼します!
「あのまま兄に連れ出されてなけりゃ、抜忍にはならなかっただろうけど、死んでたんだろうな、とは思いますよ。」
「うちはイタチの、か…。」
「はい…。あ、このことは内密に。」
「何でだよ。」
鬼鮫さんの問いに少し困りながらも笑う。
「兄との約束を果たしたいからです。」
「約束?」
「”生き延びてイタチを助ける”こと。これが兄と最期に交わした約束なんです。」
答えたら、斬不斬さんは怪訝な顔をし、白は素直に首を傾げた。
「内密にすることと何の関係があるんだよ。」
うん。まぁ、答えにはなってないよね。
私は予め用意しておいた答えを出すことにした。
「あまり人に言わない方が願いって叶うでしょう?私にとって”約束”はどうしても叶えたい願いなんです。」
「…生き甲斐である、と。」
何とも言えない顔をした白に笑い返す。
「そうだね、生き甲斐だね。それが果たせるなら何でもするってくらいには。」
「何でも、か…。」
斬不斬さんは苦笑しながら、お茶を一口含んだ。
「はい。その為に、偶然出くわした綱手様に突撃入門したほどなんで。」
「突撃…。お前らしいな。」
「あの出会い方でよく弟子入り出来たなって自分でも思います。」
斬不斬さんに笑って返したら半分呆れられた。
その隣で、白は何かを堪えるように苦々しく口を開く。
「どうして…。うちはイタチに一族を殺されたんでしょう?そのままそこにい続けたらあなたさえも彼は殺したのでしょう。なのに、どうしてあなたはうちはイタチを助けるんですか?」
苦い顔の彼に、私は苦笑を返した。
「イタチのせいじゃないんだよ。どうにも出来ないことだったの。」
その未来を知っていたからこそ、どうしても回避したかった。
イタチだけに背負わせたくもなかったし、兄ちゃんにも死んでほしくなかった。
「でも…、そのことがなかったとしても、全面戦争になって、どっちにしろ全滅してたんだろうなって思う。」
一族の在り方がその未来を引き寄せた。
兄ちゃんもイタチも私も、その未来に抗いたかったの。
その結果、ダンゾウに取って喰われた…。
様々な出来事が脳裏に過ぎっては消えていき、色々な人の色々な顔が浮かんでは消えていった。