第3章 久方ぶりの里帰り1
途中、山中いのの店でお馴染みの花屋で、大振りの百合を三本購入した。
定番の菊と迷ったんだけど、ザ・墓参りって感じで不信感丸出しになりそうだったからやめた。
どうせだったら綺麗な花を手向けようと思ったら、丁度入ったばかりの百合になった。
顔岩を登って、その奥に広がる雑木林を通り、大岩がゴロゴロしている川を流れに逆らって沿っていく。
「ここまでが一応里の区域かな。」
結構範囲でかいな。
私は辺りを見回した。
上流だけあって、眺めは抜群だ。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
「結構里の範囲って広いんですね。」
「そうだな。正確には準区域ってところか。」
へぇ、知らなかった。
あれ、そう言えば…。
「カカシせ…さんは、予定とか大丈夫だったんですか?」
案内してもらってたけど、本当は何処か行く予定だったとか。
心配して聞いたのに、何故かくすりと笑われた。
なぜに?
「いや、ないよ。それに、昔のよしみが折角帰郷したんだ。そっちの方が優先だろ?」
え、昔のよしみって誰?
やっぱり先約があったんじゃ…。
「その昔のよしみとの約束は大丈夫だったんですか?」
昔の友達か誰かが帰って来てるなら、そっちについた方が良くない?
聞いたら、何だか呆れられた。
「鈍いねぇ、相変わらず…。」
ん??
「昔のよしみってお前だよ、エニシ。」
なんですと!??
待って。
ちょっと待って。
ピンポイント!?
「えっとー…。」
まずい…!
今すぐ逃げるべき?
振り切れる!?
じりじりと一歩を下がり始めると、先生は呆れたままため息をついた。
「そうやって逃げると思ったから言わないでおいたのよ。」
言った瞬間、ざっと距離を詰められ腕を掴まれた。
「!!?」
あっちゅーまに捕まりましたよ…。