第3章 久方ぶりの里帰り1
ぼんやりと考えていると、
ドンっ
背に誰かがぶつかってきた。
その瞬間、懐かしい匂いを感じ取り、カカシは目を瞠った。
「わっ、すみませんすみません!」
振り向くと、見覚えのない女の子だった。
明るめの茶色の髪を一つに結い、カジュアルスタイルの服装に、足元はスニーカー。
だが、声に何処となく覚えがある。
「キミ、大丈夫?」
声をかけると、分かり易い程ぎくりと固まった。
次いで、ゆっくりと顔を起こす。
―あぁ、もしかして…。
その顔は、綱手様を彷彿とさせる幼顔だった。
それを、失敗を見咎められた幼子の様に強張らせている。かなり面白い顔と言える。
「待てって!!」
大声に視線を上げると、すぐそこにゲンマの姿が見えた。
すると、彼女は途端に焦り出し、右往左往し出す。
「は〜、やっと追いついた。」
「ひっ…!」
ゲンマが追いつくと同時に、小さな悲鳴を上げて自身の後ろに隠れてしまった。
それをちらりと見た後、カカシはゲンマに向き直る。
「何やってんのよ、ゲンマ。」
面倒そうなカカシの声にもどこ吹く風で、彼はにっと笑う。
「いやなに。怪しい子見つけて声かけたら逃げられるもんだからよ。しかも足速ぇし。ってか、里随一の忍がこんな所で油売ってていいのか?」
「これでも巡回中だけど?」
「ぜんぜん見えねーんだけど?堂々と如何わしい本を広げるな。」
「へーきへーき。ちゃんと見えてるから。」
カカシが本だけに集中していて巡回を怠っているとはゲンマも思っていない。
これは姿勢の問題である。