第6章 逃がさないんだから…!
ざっ、ざっ、ざっ…
規則正しい足音に合わせて優しく揺れる。
背中は少し寒いけど、お腹側はあったかい。
うっすら目を開けると、黒と赤がぼんやりと見える。
写輪眼みたい。
紅蓮に描く漆黒の勾玉…。
不意に知っている匂いが、ふわんと香る。
石鹸の匂いとイタチの匂い…。
……。
イタチの匂い…?
「…え!?」
「うわっ…!」
勢いよく起き上がったら、なんと!イタチにおんぶされてるではありませんか!!
ついでにひっくり返りそうになって急いで体勢を戻した。
「…ごめん…。」
「いや…。」
え、まって。
いまどういう状態?
なんでおんぶされてるの?
「大丈夫か?」
イタチはちらっと振り返りながら心配してくれる。
「あ、うん…。大丈夫。」
ちょっと目眩がするだけ…。
「そうか…。」
それきり、沈黙が流れる。
……。
何て聞いたらいいの、これ。
気を失った、ってこと?
戦ってる最中で気を失った事って今までなかったんだよね…。
大体が、終わった頃に意識を取り戻して惨事を目の当たりにする、みたいな感じで。その時の感触とかが薄ら残ってる感じだから凡その察しがつく。
だから状況がまるで分からないって初めて。
私ってばどんな状態で倒れてたの?
「あの…、降りるよ…?」
悪いし、恥ずかしいし…。
言ったら、止まってからすっと手を離してくれた。
地面に足がつくと、イタチから手を離してぐぐっと体を伸ばす。
固まった体が少し解れた。
さて歩こうか、と思った矢先、
「あ、れ…?」
ぐらっと視界が回って体から力が抜ける。
倒れるって思ったのに、がしっと止められた。
「…言わんこっちゃない。」
「…まじでどうなってるの?」
チャクラ切れとまではいかないものの、結構スレスレ。
どんな戦い方したらこうなるの?
「覚えてないのか?」
物凄い近距離だった。
いつの間にやら抱き込まれてる。