第6章 逃がさないんだから…!
「これはスペアだ。」
スペア。
それは写輪眼を意味するものとサソリは捉える。
「スペア、か。ならば目玉だけくり抜けば…」
「これは生かしておく。そんなに欲しいのならば、手っ取り早く勝負でもするか?」
サソリはイタチらしくない、と内心思う。
焦りとも見える反応は、強い執着を印象付けるだけだ。
奪い取ってしまおうか、と思う一方で、サソリの脳裏に先程のエニシが蘇る。
『うそつき…。』
エニシは気を失う直前に確かにそう呟いた。
苦しみ、哀しみ、憎しみ…。そういった感情の奥に見えかける何か。
それが気になり、サソリの中にブレーキがかかる。
思うままにエニシを手に入れようとしてはならない気がした。
「…やめだ。」
サソリはイタチから目を逸らすと、人形を巻物にしまい始めた。
「今日は引いてやる。精々取られないように用心するんだな。」
サソリはそう言い捨てて、デイダラの背中を強く叩く。
「ごふっ!!」
どうやらチャクラを流したらしい、とイタチは判断する。
幻術は体内の乱れたチャクラの流れを、外から正してもらう事で解ける。
「……?」
半分目を開けたデイダラは、まだ夢の中の様だ。
イタチはエニシを抱き上げてそろりと下がり、素早く部屋を抜け出した。