第6章 逃がさないんだから…!
イタチは鬼鮫からの情報を頼りに夜道を走っていく。
見渡す限りは岩ばかりで、僅かばかりに残された目印が頼りだった。
エニシであれば、目印にならない!と怒りそうなほど小さな印だ。
イタチはそれを瞬時に見分けていく。
―何事もなければいいが…。
平心を保とうとすれども、どうしても不安や心配が入り混じる。
心を捨てきれないのは、こんな時はとても厄介だ、とイタチは思う。
焦る気持ちを抑えつつ確実に目印を辿っていくと、程なくして件の洞窟へと辿り着く。
入り口の明かりはついているようだが、見張りが誰も立っていなかった。
イタチは好都合と判断して近づいていく。
すると、二人の男が倒れていた。
「これは…。」
しゃがんで確認するが、顔に見覚えはなかった。
死因は裂傷による致命傷。
刀などの長い刃物で斬られた跡ではなく、弓などの短い刃物で突き刺された跡に近い。
だが、弓なら当たればそのままにされる。態々抜き去るとは考えづらい。また、刃の入り方が正面や斜め上方から入るのも弓矢の特長である。
そして、この遺体はそれらには当てはまらない。
「これは寧ろ…。」
同業者の仕業、と考えた方が合点がいく。
「エニシ、か…?」
イタチは、立ち上がると中へと音を忍ばせて走って行った。