第6章 逃がさないんだから…!
「…どうやら俺はネイを甘く見ていた様だな。」
ルキが疲れた様に言うと、リニの顔が強張った。
「それ、どういう意味ですか?」
リニの言葉に、ルキは少し言い淀みながらも言葉を紡いでいく。
「ネイは…さっき巻物を無断で持ち出して、数人を連れて何処かのアジトに入って行ったそうだ。」
「何処かって…何処へ?」
「境界線の向こう側だそうだ。俺も今聞いたが、行ったことのない場所だ。」
「つまり、スパイだった…ってことですか?」
リニの顔には困惑の中に怒りが滲んでいる。
「ネイは!外とのパイプ役を担っているのですよ!?それを!それを…!」
リニの視線が足元に落ちた。
「…じゃあ…今の戦争は…。」
敵方の不当な要求を突っぱねた為に起こったとばかり思っていたこの戦争。
だが、もしもネイが意図的に敵方との仲をもつれさせたのだとしたら…。
「あぁ…。あいつが一枚噛んでいても不思議ではない。」
ネイは、この戦争の仲介役を名乗り出ている。
そして、秘術のことがなければ、この戦争を終結させた暁には村長を、という声も事実挙がっていた。
これら全てが、ネイのシナリオなのだとしたら…。
「ルキさん…。今すぐ人を集めましょう。最も信頼できる人だけを。」
「そうだな。」
イタチはそれを聴き終えると、すたすたとドアに向かう。
「イタチさん、どちらへ?」
鬼鮫が尋ねると、イタチは少しだけ振り返る。
「エニシを迎えに行く。」
「待ってください、俺達も…」
「悪いが待つことは出来ない。」
イタチは口早にそう告げると、しゅっといなくなった。