第3章 久方ぶりの里帰り1
「待てって!!」
すぐ近くから大声がして、我に返ってびくりと肩を震わした。
やべぇ、後ろに蛇で前に虎だよ!
絶体絶命だよ!
「は〜、やっと追いついた。」
「ひっ…!」
私は思わずカカシ先生を盾にして隠れた。
「何やってんのよ、ゲンマ。」
「いやなに。怪しい子見つけて声かけたら逃げられるもんだからよ。しかも足速ぇし。」
久々に走ったわ、と言いながら服を引っ張ってバサバサと仰ぐ。
カカシ先生と対等なこの感じ。ゲンマなる人は、まさかの上忍か!?
「ってか、里随一の忍がこんな所で油売ってていいのか?」
「これでも巡回中だけど?」
「ぜんぜん見えねーんだけど?堂々と如何わしい本を広げるな。」
ごもっとも。
「へーきへーき。ちゃんと見えてるから。」
嘘くさい…。
「それより、後ろの子引き渡してくれよ。色々聞きたい事あるから。」
むりむりむりむりむり!
振り返ったカカシさんに、全力で首を振る。
すると、なんとも困った様なめんどくさい様な渋い顔が作られていく。
それから、すっと私から目を逸らす様にゲンマさんに向き直る。
「…随分とまぁ、嫌われたもんだね。」
「うるせーなぁ。そんな悠長な事言って、変な奴を取り逃したらどうすんだよ?」
当たらずとも遠からず。さすがの洞察力。
恐るべし、上忍…。
それを聞いたカカシ先生は、面倒そうなため息を一つ。
「いいよ、俺が見とくから。ゲンマは他の区域を当たって。」
カカシ先生がそう言うと、少しの沈黙が流れる。
そして、今度はゲンマさんがため息をついて、がしがしっと後ろ頭を乱雑に掻いた。
「ったく。ちゃんと聞き出しとけよ?」
そう言うと、元来た道を戻っていく。
思わず、ほっと小さく息をついた。
下手に騒がれたらたまったもんじゃないからね。