第3章 久方ぶりの里帰り1
「ちょっと待てよ!逃げるこたぁないだろ!?」
待てと言われて待つ馬鹿はいないんだよ!誰が素直に従うか!
ってかしつこい!
くそ〜、騒ぎが大きくなる前に撒きたいのに!
街中に、それも人通りの多い所を態と狙って走り抜ける。
けど、本気を出せないからどうしたっていたちごっこになるよね。勿論、あのゲンマって人だって忍なんだから本気出してないだろうし。
もう、いっその事屋根の上を走ろうかしら。
ちらちらと後ろを気にしつつ、人の間を縫うように走っていると…、
ドンっ
「おっと。」
人にぶつかってしまった。
視界に緑色が広がり目の前が塞がれる。
「わっ、すみませんすみません!」
私は慌てて一歩下がり、誤り倒す。
背丈や声から言って、男だろう。
もし絡まれたりしたら足止め食って詰む。
私は後ろを気にしつつ、その人から遠ざかろうとすると、
「キミ、大丈夫?」
声をかけられた。
あれ…?なんか、声に聞き覚えがあるような…。
内心冷や汗をだらだら垂らしながら頭上を見上げると、
「……!!?」
げ!!?
…って叫ばなかった自分を褒めてあげたい。
そこには、例の本を片手に、ダルそうな片目をこちらに向けた、銀髪の人が立っていた。