第6章 逃がさないんだから…!
「イタチさん、どうやら動いた様ですよ。」
鬼鮫は窓辺に座って外を眺めていたイタチに呼びかけた。
彼はそれを受けて、すっと立ち上がる。
「…行くぞ。」
「えぇ。」
二人は部屋を出た。
「どういう、ことだ?」
ルキは困惑しながらも聞き返した。
「どうもこうも、あなた方の中にスパイがいると言っているんですよ。名前は確か…。」
「…ネイだ。特徴を聞くとあいつしか考えられない。」
「ついて行った人はよく見えませんでしたがね。」
「まだいるのか…。」
ルキは頭を抱える。
確かに戦況を変える為に、藁にもすがる思いで暁を頼ったのだが、それはあくまで村の皆が一致団結がしていることが大前提である。
だが。
裏切り者がネイであるならば、この戦争の始まりにも疑念が生じることになる。
そもそも、ネイが外との繋ぎ役を買って出ていたのだ。
ネイの対応いかんで、幾らでもやりようがあるのでは、と勘ぐりたくもなる。
「この情報をどうするのかは、お前次第だ。」
イタチはぐったりと項垂れるルキに静かに言うと、彼はぐっと身を起こした。
「…こうしている間にも奇襲を仕掛けられるかも、攻撃の算段をしているかもしれない。早急に手を打つ。」
「その方がいいでしょうね。昼間立てた作戦も練り直した方が賢明でしょう。」
鬼鮫は淡々と述べる。
「我々の仕事は前線を押し戻すことです。ここからはあなた方だけでどうにかしてください。」
鬼鮫の言葉にルキは頷きを返す。
そして、イタチが立ち上がったところに、コンコンという壁をノックする音と共に、リニが現れた。