第6章 逃がさないんだから…!
※残酷描写があります。
苦手な方はスキップしてください。
「おい、聞いてるか?」
男はエニシに向かって言うも、反応がない事に嬉しそうな顔を歪ませた。
クスリが効いていると思っているのだろう。
男は敵方と通じていた。
戦争の火蓋を密かに切ったのもこの男だ。
敵方の目的は、ルキ達一族を懐柔して、その能力を手に入れる事、手に入らなければ殺す事だった。
男は自身の味方とそうでない者に分けて選別してきた。
戦争を口実に密かに屠ってきたのだ。
全ては長としての地位を取り戻す為だった。
そして、敵方から共謀した見返りとしての富を約束されている。
その中には、こうした麻薬や劇薬の類を容易に入手できる権利も得ていた。
「まぁ、せいぜい快楽を堪能する事だな。」
男はせせら嗤う様に吐き捨てると、その場を後にする。
いい奴隷が手に入った、と気分が良かった。
「誰に向かって言ってるの?」
底冷えする様な声に、男の背筋が震えた。
恐る恐る振り返ると、縛られ薬で動けない筈の女が平然と立っていた。
その瞳には血の様に赤い写輪眼が浮かんでいる。
「…っ、…!」
男が立ち尽くしていると、女は緩慢な動きで鉄格子に足をかける。
次の瞬間にはガンっ!!という大きな音と共に鉄格子の殆どが鉄屑と化していた。
ヒリっという痛みに、頬に手を当ててみるとぬるっとした感触が…。
「……!」
驚きながら手元を見ると、やはり血糊だった。
男の周りや後ろにはいつの間にか鉄屑が散らばっている。