第6章 逃がさないんだから…!
そして今…。
「これもどうぞ。」
「よかったらこれも。」
「これ美味しいですよ。」
と。
次々に広げられる美味しそうなご飯の数々。
これを目の前に兵糧丸を食べるしかない私。
切ない!!
隣では広げられたご飯に目もくれず、平然と村人を眺めるイタチ。
お腹空かないのかしら。
私の視線に気がついたイタチが振り向いて苦笑した。
「懸命な判断だな。」
「鬼鮫さんから、差し出された食べ物には手を付けないようにって言われたもんだから…。」
いつもだったら意気揚々と食べてたよ。
旅先では治療して回ることが多くて、お礼にって料理を提供されることがよくあった。
だから、目の前に差し出されて食べれないのってジレンマを感じるわ。
「そうだな、今はその方がいいだろう。気になるなら出るか?」
「そうだね、気になって仕方なくなるし。」
私達が揃って席を立つと、リニさんとルキさんがこちらにやってくるところだった。
「もういいのですか?」
「まだまだあるぞ?」
手には赤い液体が…。
もしかしなくてもお酒かしら。
私の視線に気づいてルキさんが苦笑する。
「これか?これはこの地域で作られる蒸留酒だ。水が貴重でな。飲み物は酒か薬膳茶しかないんだ。」
「え、薬膳茶?」
めっちゃ気になる。
何を隠そう、私はお茶に目がない。
オーソドックスな紅茶からハーブティ、中国茶などなど。
珍しいものだったら、尚のこと試飲してみたくなる。
「薬膳茶がお好みでしたらこちらに沢山ありますよ。」
がしっとリニさんに手を掴まれる。
あ、やばい流れ…。
「さぁさぁ、こちらです。」
「ちょ、ちょっ…。」
意外にぐいぐい来るな、この人。
まぁ、ちょっとくらいなら…。
「ごめん、イタチ。ちょっとだけ行ってくる。」
イタチは複雑な顔を向けていた。
心配が殆ど、気に入らないが少し、かな?
「あぁ…。用心しろよ?」
「うん、分かってる。」