第6章 逃がさないんだから…!
「何の歌だ?」
「うぉわっ…!」
びっくりしたぁ!
風が起こるのと登場するタイミングが同時だったんだよ。
イタチは飛び上がった私を見て、やれやれとため息をつく。
「お前な…。」
「ごめんて。最近そんな急に登場する人を見なかったもんだから…。」
綱手様もシズネさんも大概足音がするから気付けるのよ。
こんな登場の仕方は兄ちゃん以来だ。
「それで、何の歌だったんだ?随分寂しそうだったが。」
イタチは言いながら、私と背中合わせで座ると私に背中を預ける。
冷えるせいか、合わさった背中がすごくあったかい。
「むかーしにね。街で聞いたの。」
この歌は懐メロで、日本にいた時も随分前に流行った曲。
賛否両論あるんだけど、私は割とこの歌は好きだ。
「…もう一度、歌ってくれないか?」
イタチは小さな声で呟く様に言った。
「…いいよ。」
私もイタチに寄りかかると、また歌いだした。
懐かしいなぁ。
従兄弟の家でこの歌もよく歌ってた。
おばちゃんが好きだったんだよね。
私がこの曲を好きなのは、おばちゃんが好きだからってのが大部分を締めてたりする。
『由紀もいつかこの曲の本当の良さが分かるよ。』
ってたまに言われてた。
「♪泣きながらーー」
イタチにも泣いた夜があったのかなぁ。
歌い終わってもイタチは黙ったまま。
ちょっとだけ振り返ると広い背中が見える。
昔は私と同じくらいの背丈だったのに。
なんだったら私の方がちょっぴり大きかったかも。
私の知らないイタチの月日が流れたんだ。
普通だったら背が伸びるたびに、家族で”良かったね”なんて喜び合うものよね。
私でさえ、綱手様やシズネさんに偶に成長のお祝いしてもらった。
その間、イタチはひとりぼっちで喜びとは無縁の殺伐とした場所に身を置いてたんだよね。
まぁ…。
そんなこと言ったら、きっとサスケもナルトも似た様なものなんだろうけど…。
でも…。
切ないなぁ。