第6章 逃がさないんだから…!
「――…このような陣形を組むことで、二人を中心に敵陣へ切り込むことが出来る。」
「そうか…。ならばこことここに配置し、俺とリニがそれぞれ入ろう。そしてここはーー。」
今はイタチを中心に軍事会議の真っ最中。
マルチに何でも出来るんだよね。さっすが〜。
あの後、ルキさんは無事秘術を会得して、休むことなく作戦会議が始まった。
目が覚めたルキさんは、リニさんと同じく穏やかになっていた。
何か悟った感があるって言ったら伝わるかな。
まるで修行から帰ってきたお坊さんって感じ。
そんなリニさん達の方を、機嫌悪そうに見つめている鬼鮫さん。
何があったんでしょう…?
「…何ですか?」
こっちを見ずに答えが返ってきた。
「いやぁ…、機嫌悪そうだなって。どうかしたんですか?」
隠しても無駄な様な気がしたからストレートに聞いてみた。
「別にどうもしないですよ。」
そういえばさっきリニさんに質問してた時、やけに刺々しかったよね。
ってことは…。
「凄惨な過去を見たのに何でピンピンしてるのか、って事ですかね?」
鬼鮫さんが私をちらりと見た。
「あなたも腑に落ちないのですか?」
「まぁ、多少は。一族にしか開かれない路がどうやって開いたのかも謎ですよね。」
「…あなたも偶には良いところに目をつけるんですね。」
「私はいつも冴えてますー。」
ほんとに一言多いんだから。
「私も同じ疑問を持ってますよ。それさえ分かれば私も会得出来るんですから。」
だから悔しかったのね。
でも、仮に鬼鮫さんが秘術を会得できたとしたら…。
「…やめましょうよ。文字通り”鬼に金棒”になっちゃうじゃないですか。」
笑いながら人を爆破させていく鬼鮫さんを想像しちゃって、ぞぞぞっと鳥肌が立った。
おっそろすぃー…。
「あなたも大概失礼な人ですね。私はそんなに殺人鬼に見えるんですか?」
「え、見えないですか?」
思わず返したら、一瞬で冷徹な顔つきになった。
やばっ!
「あなたとは一度腰を据えて話をしなければならない様ですねぇ。」
「すみませんごめんなさい勘弁してください。」
土下座する勢いで速攻謝っといた。
死亡フラグなんかへし折ってなんぼよ。
そのプライドもへったくれもない私に、逆に鬼鮫さんは呆れ返った。