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もう一度、を叶えるために。second

第6章 逃がさないんだから…!




ルキさんの方がリニさんより道のりが遠かった。
リニさんはすんなり感知したのに対して、ルキさんは何度か繰り返し繰り返して漸く感覚が掴めたらしい。

そうこうしている内にリニさんに変化が現れた。
リニさん全体が膝に置いてあった巻物と共にふわっとした光に包まれて、その光は彼の中心に向かって吸い込まれる様に集束していった。
全てが収まると、リニさんは二、三度瞬きをして意識を取り戻した。

「…どうだった?」

隣に座っていたルキさんがそっと問いかけると、リニさんはその声に応える様に静かに笑う。

「会得しました。」

リニさんは、隣を向く。

「今度はルキさんの番です。これはあなたが持つべきだ。」

そう言った彼の顔は、秘術を得る前より穏やかだった。
辛い過去を見た筈なのに何でだろう。

「…過去を追体験した割には平然としているのですね。」

鬼鮫さんが私が思っていることを尋ねた。
端々に棘がある気がするけど…。

リニさんは鬼鮫さんの言葉に気分を害した様子もなく、困った様に少し笑う。

「詳しくは言えないんですが…。あなた方の予想通り、俺達にしか開かれない路があったんです。」

そう言って、ルキさんに向き直った。

「行ってください。俺達の長として、この村を守る者として。」

それを聞いたルキさんの顔が引き締まり、リニさんに頷き返した。
イタチは黙って巻物を開いて差し出し、私はそれに倣って補助に入る。

「もう一度。両手に溜めてみてください。」

「はい。」

うん、さっきよりだいぶいい感じ。

「離します。」

声をかけてから手を離す。
うんうん。上出来だね。

ルキさんもそれを分かってるのか、そのまま両手を巻物に持っていく。
音もなく彼の意識は途切れた。

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