第6章 逃がさないんだから…!
「さて、では私から行きましょう。」
「あぁ。」
イタチが鬼鮫さんの方に巻物を広げると、彼は迷いなく白紙の上に手を翳す。
すると、あっという間に鬼鮫さんの目が朧げになった。
気を失っている様な、心ここに在らずの様な…。
けれどしっかりと立ったまま。
「…起きてるけど気絶してるみたいな感じに見えるね。」
私もこんな状態だったのか。
「お前の時は、この状態で苦しそうに泣き出すものだから、とにかく焦った…。」
イタチはほんの少し眉根を寄せながら、ふぅとため息をつく。
きっと”罰”を受けてた時だね。
「ごめんごめん。心配かけちゃったね。」
ふふっと思わず笑いが漏れた。
ちょっとでも気にかけてもらって少し嬉しい。
「もし、イタチが泣くことがあったら、今度は私が傍にいるね。」
にっと笑うと、イタチは少し微笑んだ。
「あぁ、期待している。」
「まっかせて!」
イタチから頼りにされるのって、なんかくすぐったい。
それがほんの些細な冗談だったとしても。
少しして、鬼鮫さんの瞳に光が戻ってくる。
ぼーっとしてる様な感じだけど、戻って来てる感じはある。
「大丈夫ですか…?」
そろりと問いかけると、鬼鮫さんはそのまま目を瞑り、大きく深呼吸し出した。
様子を見ていると、また鬼鮫さんの目が開く。
今度は強い光が浮かんでいた。
「さて、イタチさんの番ですね。」
いやいや、待って。
どうだったのか聞きたいんだけど。
そう思ってたら、鬼鮫さんが私を見てニィっと笑う。
「イタチさんが終わったらお望み通り教えてあげますよ。」
「…左様ですか。」
私は膨れっ面を作った。
何で考えてることが分かるさ?
私の顔で会話しないでよね。
「嫌ならもう少し表情を消す練習をしたらいかがです?」
「大きなお世話ですー。」
ふんだ。
「ならば、次は俺か。」
「私が持ちましょう。」
鬼鮫さんは言いながら、イタチに差し出す様に巻物を広げた。
「無理しないでね。」
私が小さく言うと、イタチは私の方をちらりと見てから巻物に手を翳した。
すると、一瞬でイタチの瞳が朧げになる。
入ったんだなって分かった。
どうか、辛すぎる過去でありませんように…。