第6章 逃がさないんだから…!
「いやいや。私、天使の知り合いなんていないよ?」
「そもそも、何であなたは天使なる者を知ってるんでしょうねぇ?」
「ゔっ…。」
鬼鮫さんから突っ込まれて思わず呻く。
やっぱり天使なんて聞かないよねぇ。
私もこちらに生まれてから一度も見聞きしたことないし。
「あー…、街へ出た時に読んだ物語で出てきて。綺麗な童話だったしよく覚えてて。」
苦笑いで答えたら、鬼鮫さんは胡散臭そうに私を見ながらも、ふむ、と一先ず飲み込んでくれる。
「まぁいいでしょう。その関門とやらが過去を見せるのだとして、ただ見せるだけなのですか?」
鬼鮫さんが長さんに問うと、彼は首を捻って考え込む。
「その先に秘術がある、としか聞いたことがないもんでね…。俺もよくは分からないんだ。」
そりゃまぁそうだよね。
さっきまでそこに埋められてて誰も見た事もない物だったし。
秘術の資料は何も無かったしね。
ちらっと鬼鮫さんを見ると、彼は面倒そうにはぁぁ、とため息をついた。
「…いいでしょう。私も潜りますよ。」
「うん、それがいいと思います。」
私は大きく頷いた。
そうすれば、本当にその人の過去を見せるのか、はたまた唯のまやかしか分かるんじゃないかな。
「俺も入ろう。」
「え、イタチも?」
大丈夫かな…。
色々と不安要素いっぱい抱えてない?
辛すぎる過去が色々と多いんじゃ…。
「あぁ。」
短く返事をするイタチに、私は複雑に思う。
鬼鮫さんには入るように勧めておいてイタチにはやめた方がいいとは言えないし…。
「ほう?イタチさんは止めるのですか?」
ぎくっ。
そろっと鬼鮫さんを見上げると、にやりと笑ってこちらを見ている。
「ま、まっさかぁ〜。」
そろそろ〜っと視線を外す私。
「そうですよねぇ。私には入るように勧めたんですから。」
よ、読まれてる…。
たらたらと汗が吹き出そうな私の事など知らないイタチは、ぽんと私の肩を叩く。
「心配するな。」
「そう、ただ過去を”見るだけ”ですよ。」
「そ、そう…。」
鬼鮫さんの追い討ちに何も言えなかった。
だ、大丈夫なのかな…。