第6章 逃がさないんだから…!
「ひっく…、…ひっく…。」
涙は止まったけど吃逆が止まんなくなった。
でも、漸くさっきの残滓から解放された感じ。
イタチはそれを察して、そっと腕を緩めた。
うぅ、目がばんぱんなのが鏡を見なくても分かる。
「泣きすぎですよ。」
「…そうですね…。…ひっく…。」
そんな呆れ顔で言われても…。
私だってコントロール不能だったんですよ。
だって明らかに他人の夢か記憶か幻か…だったんだもん。
羽の生えた人なんてぶっ飛んだ人、知り合いにはいないですもん。
でも怖いくらい感覚とかがリアルだった。
「大体、何を見たんですか?」
鬼鮫さんは、心底面倒そうに尋ねてくる。
「…普通、大丈夫かぐらい言いません?」
「言いませんね。」
「即答ですか。…ひっく。」
っていうか、イタチの服が…。
「…ごめんね。」
やっちゃったよ…。
鼻水が付いてないのが不幸中の幸い。
タオルタオル…。
探そうとすると手を取られた。
「いい、大丈夫だ。」
「いやでも…。」
めっちゃ気になるよ?
すると、すっと差し出された絞りタオルと乾いたタオル。
「…あの、これ使ってください。」
「あ、え?」
私はその手の主を視線で追うと、リニさんだった。
その後ろには心配そうに見守る長さんと村人の方々が。
…忘れてた。
ここには大勢いたんだった。
「恥ずかしい…。」
こんな公衆の面前で大泣きしたのね。
「大丈夫ですか…?」
心配そうにリニさんに尋ねられて、受け取った濡れタオルで目元を冷やしながら頷いた。
「大丈夫です。ご心配おかけしました。」
はぁ、タオルがひんやりして気持ちいい。
少し冷やしていると、
「…何を見たのか聞かせてくれ。」
イタチから声がかかり、私はタオルから目を離した。
「それが…。」
すっごい説明が難しいぞ。
そもそも、天使ってこの世界に存在が知られてる?
「どっから話せばいいのやら…。」
「見たままを言ったらいい。」
「うーん…。」
ちらっと鬼鮫さんを見てから、イタチを見た。
「変な奴だって言わないでね?」
「分かった。」
どうせ上手くは言えないし。
そもそもリアルだったけど、私のことじゃないし。
ってことで、見たままを言うことにした。