第6章 逃がさないんだから…!
「……っ、……!エニシ!!」
揺さぶられ、大声で呼びかけられて、びくりと体が飛び跳ねる。
「……っ?」
目の前には、どこか焦った様な心配そうなイタチの顔が…。
「大丈夫か…?」
覗き込む瞳には優しさが湛えられている。
私は声が出せずに、こわばる身体を動かし頷く。
「良かった…。」
そう言って、そっと抱きしめられた。
その温もりが”愛しい人”みたいで、何だか心の底からホッとする。
「うぅ…。」
お腹の底から熱いものが込み上げて、涙が膨れ上がってくる。
「うぅぅ、ふ、うぅ。」
変な声を出しながらも、泣くまいと頑張るけど、意思に関係なく溢れ出していく。
「…泣いていい。」
落ち着いて、とでもいう様に、背に回された手が優しくぽんぽんと叩かれた。
「うぅぅ、ごめん…。」
謝ってから、私は言葉に甘えてイタチの胸に顔を埋めて、堰き止めていた涙を解放した。