第6章 逃がさないんだから…!
すると突然、目の前のその人は雲のように掻き消え、今度は誰かに押さえつけられていた。
全身の隅々にまで渡る激しい痛みと苦痛。
まるで、身体を無数に切り刻まれてるよう。
視界にゆらゆらと劫火が揺らめき、合間に蛇の様に絡みつく稲妻が迸る。
「―――さ、ま…。」
手を伸ばすその先で、誰かに囲まれながら呆然と立ち尽くす愛しい人。
その姿からは絶望が滲み出ている。
これは罰だ。
戒律を破り、本来は触れることさえ叶わないその人を恋慕った罰…。
「―――さ、ま…。」
涙が止まらない。
激痛も止まない。
けれど何より苦痛なのは、愛しい人と引き裂かれること。
今日限りで、私はこの方にお目見えする事も叶わなくなる。
罰を受けるよりも苦しい。
言葉にならない張り裂けそうな痛み。
手を伸ばしても届かない。
伸ばしたはずの手も見えない。
本当に文字通り、切り刻まれて無くなってしまったかの様。
愛しい人の瞳から涙がとめどなく流れていく。
あぁ。同じ気持ちでいてくれるのね…。
何故か想いが伝わる。
それがせめてもの救いだった。
その人の口元が私を呼んだ気がした。
――エニシ…
遠く…、遠くで私を呼ぶ声が聞こえる。