第6章 逃がさないんだから…!
そこは真っ黒な空間だった。
虚空って言ったらいいのかどうなのか。
自分の体はね、見えるの。
別に光ってるとかじゃなく。
真っ暗闇でどこ向いても只々真っ暗、とかじゃないの。
普通に昼間の景色を見てるみたいに自分の姿だけが見える。
けど、その他は真っ黒ってこと。
「ここどこよ…。」
私は力無く座り込んだ。
肩を落としたくもなるってもんでしょ?
私は一体何の罠に嵌ったのって。
迂闊だったわ…。
「はぁぁぁ…。」
ため息をついた瞬間、ぱっと明かりがついた様に辺りが明るくなった。
なんだなんだ?
「―――さま!」
…誰の声?
景色が流れいくと同時に視界がクリアになっていく。
視界いっぱいに広がる木々や花々がきらきらと光り輝いている。
いつの間に外に出たのやら…。
そこは常春の様な心地良い場所で顔に当たる風までがリアルだ。
っていうか飛んでる?
しかも夢を見るみたいに誰かの視点で景色が見えている。
「―――さま!」
誰を呼んでいるのか分からないけど、少し遠くにいるあの人がきっと呼んでいる人なんだろうな、って分かる。
だって凄く嬉しいから。
その人を見つけて嬉しくてしょうがないって感情がぶわっと流れ込んでくる。
「―――さま!」
呼びかけにその人が答えた。
背に大きく真っ白な翼を携えたその姿はまごう事なき天使そのもの。
白銀の長い髪はそよ風に乗り綺麗に流れている。
「―――、よく来たね。さぁ、おいで。」
その人は、私に気づいて両手を広げて待っていてくれる。
何て呼びかけられたのかは分からないけど、自分が呼ばれたのは分かった。
「はい!」
嬉しそうに答えると、いつものようにぱふっと飛び込んだ。
「―――。」
その人もふんわりと私を受け止めると、嬉しそうにぎゅっと私を抱きしめる。
見上げてみると、顔は霞がかかった様によく見えない。
けれど、愛しくて大事な人。
このやりとりは”私たち”の”日常”だ。
何でか、確信的にそう思う。
まるで夢を見てるみたい…。