第6章 逃がさないんだから…!
「さすがうちはの天才は違いますね、誰かさんと違って。」
「本当に凄いですよ。一時間眺めてても私には全く意味不明でしたわ。」
至極普通に鬼鮫さんに返したら、奇妙な顔で見返された。
「…今、嫌味を言ったつもりだったんですがねぇ。」
はい?
どういう…あぁ。
「私にその手の嫌味は通じないですよ。」
そりゃそうだよ。
だれがハイスペック王子と張り合おうって奴がいるのよ。
「私、イタチに劣等感って持った事ないですから。張り合うより知恵を借りる方が建設的ですし。」
「普通はプライドを傷つけられたと怒り出す人が殆どなんですがね。」
つまらないですね、と鬼鮫さんは肩をすくめた。
「残念でした。私はイタチを引き合いに出されて傷つくようなプライドを持ち合わせていませんから。」
うちは一族の上役と違ってね。
何で意固地とも言える様なちゃちいプライドを後生大事に持てたのか、私には未だに理解できない。
あれがなけりゃクーデターなんて…って堂々巡りになるから止めよう。
考えるだけ無駄だ。
私は軽く頭を振って思考を切り替える。
今は方陣の謎を解く事に集中しなきゃ。
「とりあえず、丑、寅、子でチャクラを練って流せばいい?」
「あぁ、俺と同時の方がいいだろう。」
「え、そんな事も書いてあるの?」
やり方も書いてあるなんて。
でもどこに?
「いや、勘だ。見た目から。」
「勘ですか。」
笑っちゃったよ。
偶に大雑把に走る事があるのが、またイタチの面白いところだったりする。
あくまで個人的感想ですが。
いや、この場合は揃えるって意味で几帳面と言えるか。
「分かった。せーので行こう。」
「あぁ。」
私達は互いを見ながら手を組んだ。
「「せーの。」」
私は、丑、寅、子。
イタチは、申、亥、卯。
私達は同じリズムで印を組むと、チャクラを流す円の縁に同時に手を置いた。