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もう一度、を叶えるために。second

第6章 逃がさないんだから…!






「おやおや、命知らずとはあなた方の事を言うのでしょうね。」

「ぐぁ……!」

「かはっ…!」

一人、二人、と…。
鬼鮫は、歯向かう物を片っ端から大刀で薙ぎ払う。
その度に、鮫肌は人の肉を削ぎ取り、ギィギィと喜びの声を上げて嬉しそうに血を浴びる。
鬼鮫にとって、人の死とは日常の一部だ。
何の感慨もない。

「…口程にもありませんね。」

ただの肉塊となった屍を冷たく見下ろす様は、敵から見ればさぞ怖かろう。
或いは、人々の目には死神の様にも映るかもしれない。

―相変わらず退屈だ。

鬼鮫は心の中で不満を零しながら、辺りを見回した。
視界に映るのは遠巻きにこちらを見遣る人影ばかり。

―賢明な判断だな。

相対すれば死しかないと分かっていて命を投げ出す者はいないだろう。
彼にとってはつまらないが。

屍が地を埋め尽くすこの場で立っているのは、鬼鮫の他にイタチだけだ。
彼も同じく歯向かう者を容赦なく屠っている。
だが、その表情は浮かない。
元々、こういった血生臭い任務を好まないとは思っていたが、いつも以上に沈んでいる。
エニシに会ったせいだろうか、と鬼鮫は考える。

―振り切ってしまえば、もっと楽になるだろうに…。

不器用な人だ、と鬼鮫は思う。
人の死に思いを馳せるから、自身を責めたくなるのだ。
ならば捨て置けばいい。
何も感じなければ自身を苛むこともないのだ。
闇の世界に身を置くのなら、その様に遮断してしまった方が身の為である、と鬼鮫は考える。
けれども、イタチにはそれが出来ないのだろう。
いや、敢えてしないのだろうか。
どちらにしろ、やはり不器用なことに変わりはない。

「…イタチさん、ここら辺で一旦手を引きますか?」

あれから、遠巻きに見ている者達は動く気配がまるでない。
ならば、これ以上留まっても時間の無駄というもの。
イタチもそれを読み取っていたのだろう。
考えるそぶりもなく頷きを返した。

「あぁ、一度戻る。」

その返答を受け、鬼鮫は踵を返す。

さて、明日はどの様な風が吹くことやら。


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