第6章 逃がさないんだから…!
けど、次の瞬間にはその瞳に光が宿っていた。
「ですが、秘術があれば自分の心臓じゃなく、他人の心臓を使うことが出来る。敵方に爆弾を仕込む事が出来るって事です。」
「他人の心臓を結晶化させる事が出来るのが秘術?」
「そうです。」
使い道を誤れば禁術に近い、危ないヤツだな。
さて、開かずの扉を開くべきか否か…。
私の逡巡を悟ったアルビノさんは、苦々しく俯く。
「…このままじゃ、俺達は全滅です。
相手は一国とも言える戦力を有している。只々一方的に攻め込まれて無惨にも仲間は散って逝きました。」
言いながら、涙を呑み込む様にぎゅっと両手を強く握り込んだ。
「それに…、今日前線を防げても、明日はどうなるか分からない。ここで手を引く奴らなら、とうに手を引いている。長引くことは必定で、その度に手練れを雇う余裕なんて俺達には無い。」
アルビノさんは真っ直ぐに私を見る。
「一目瞭然の強い切り札が必要なんです。」
…うん、分かるよ?
分かるんだけど、私からしたらパンドラの箱を開く様なものだ。
「…諸刃の剣になるって分かってますか?聞く限りでは、相手を内部から簡単に爆破させられる強力な代物ですよね。」
可哀想だけど、開かずにいた方がいいんじゃ…。
「…今はいいですよ、共通の敵がいるから。けれどこの戦争のケリがついたら?悪用されたら?内部抗争になったら?その懸念は…」
「けど、俺達には”今”が必要なんです!」
それは…、そうだけど…。
「今生き残らなかったら、そんな懸念なんか何の意味もない。後の憂い為に、俺達は死ぬべきだって言うんですか!?」
……。
まるで、うちは一族みたい…。
うちはは、里の人達の憂いになる一族だった。
その憂いを取り除くには、死あるのみ。
それが里上層部が出した答えだった。
じゃあ、その中で生きている私達はなんなの?って、里にいた時不満があった。
…そうよね。
この人達には”今”を掴み取らなきゃ”死”しかない。
それがたとえ毒でも、起死回生の強力な武器がほしいところ。
「事情は分かりました。けど…、術の解き方が分からなきゃそもそも開ける事すら出来ないですよ?」
「俺に心当たりがあります。」
アルビノさんはそう言うと、棚にある本を探し始めた。