第6章 逃がさないんだから…!
その人…名前わかんないからアルビノさんでいいや。
アルビノさんは、読みかけだった本に栞を挟んでテーブルに置くと立ち上がった。
そして、近くに置いてあった松葉杖を使って歩いてくる。
「その…、向こうの道の先にある、鍵がしてある部屋なんですけど…。」
「あぁ。書物庫のことですね。」
そう言ってから少しびっこに歩き出す。
書物庫だったんだ。
でも何で…。
「…何で、鍵をかけてるんですか?」
何処の部屋もみんなフリーダムなのに。
そこに、重要な何かがあるんだろうか。
聞いたら、ぴたっと歩みを止めた。
「…一族には大体が秘術があるものですよね。」
…あー、なるほど。
だから簡単に見聞きできない様にしていると。
「だったら…、何で開けてくれる気になったんですか?」
大事なものだったら、尚のこと私の興味本位なんて突っぱねちゃえばいいのに。
「それは…。」
アルビノさんは、昏い瞳で振り向く。
「それは?」
「とうせ途絶えるのなら…、もう鍵は必要ないかなって…。」
何かを悟ったかの様な口振りだった。
全身に無気力に似た絶望を纏っている。
アルビノさんはまた歩き出した。
私は何も言わずに黙って後を追う。
かけられる言葉は出てこなかった。
この人にはきっと、励ましも慰めも虚しく響くだろうから。