第6章 逃がさないんだから…!
これが綱手様との約束を果たしつつイタチを支えられるぎりぎりのライン。
信じてほしいなんて贅沢は言わないけど、許容してくれたら嬉しい。
てっきり嫌な顔されるかなって思ったのに、イタチはただ、じっと私を見る。
「お前は…、俺が穢らわしいとは…思わないのか…?」
イタチはどこか不安気に声を揺らしながら、戸惑いの瞳で見返してきた。
一瞬面食らったけど、どこか昔を彷彿とさせるその仕草に、凄くほっとした。
やっぱり、イタチはイタチだなぁ、って。
「そんな事全然思わないよ。イタチは昔のまんまだよ。」
真っ直ぐで、自分の正義をちゃんと持ってる。
自分に厳しくて少し繊細で、それでいて凄く芯の強い人。
私が笑顔で答えたのが驚いたのか変だったのか、イタチは面食らった様な顔をした後、少し笑ってふぅって息を吐き出した。
あ、そうだ。
「鬼鮫さん、すみません。力になれない事、許してください。」
私は誠意を持って頭を下げた。
戦力として期待はされてないかもしれないけど、仕事しないって言われていい気分はしないよね、って思うから。
「…いいですけど。」
その声に不意に顔を上げると、鬼鮫さんがイタチに視線を投げているところが一瞬見えた。
…な〜んだ。そういうことか。
つまりは、イタチを思っての苦言だったわけだ。
口では冷たい事言うんだけど、意外と優しい人なんだと思う。
「どうでもいいですが、話が纏まったならさっさと取り掛かりますよ。」
鬼鮫さんはそう言って歩き出し、依頼者達は慌てて支度にかかる。
イタチも少し笑って後に続いた。
…お気遣い、ありがとうございます。
「イタチをよろしくお願いします。」
「よろしくされるほど、この人は弱い人じゃありませんよ。」
鬼鮫さんは少し振り返って不敵に笑った。