第6章 逃がさないんだから…!
でも、私は綱手様との約束があるから行けない。
「私、ここで留守番してる。」
私が言うと、意外そうな顔をしたイタチが振り向く。
「てっきり、あなたもやると思ったのですが。」
皮肉げな顔をした鬼鮫さんが言う。
まぁ、ここまで首突っ込んどいて今更…って思うだろうな。
「申し訳ないんだけど、私は手を貸せません。その代わり治療は受け持ちます。ここにいる人達の怪我は、治せる範囲で治療します。」
「そんな事聞いてるんじゃないんですが。」
あら、ダメ?
うーん、困ったな。
「あなたはイタチさんに着いてきた。それはつまり、こういった事も想定として含まれていたんじゃないですか?戦場に出れば当然イタチさんの負担は増えます。それを軽くするのも治療の一つだと思いますがね。」
「よせ、鬼鮫。」
「いいよ、イタチ。鬼鮫さんの言う事は尤もだし。私もちょっと虫がいいかなって思ってる。」
治療するだけして見てるだけかよ、って不満は理解できる。
同じうちはだから戦闘能力はあるんだし。
けどね…。
「だけどごめん。私は医療を教えてくれた師匠と約束したの。暁に手を貸さないって。それを条件にこの力を手に入れた。」
綱手様は、私に術を教えてくれた恩人でもあり、姉の様な人でもある。
私にとって、綱手様とシズネさんは唯一の家族だ。
だからこそ、たとえ口約束だったとしても、それを守らないのは絆を捨てる様なものだ。
「だからこの約束を破るわけにはいかないの。」
私は苦々しい想いを呑み込んだ。
苦しむって分かってる場所にイタチを一人で追いやるんだから…。
「でも、私はイタチをここで待つ。怪我しない様に、任務が成功する様に祈ってる。」
たとえ怪我しても、命の危機に晒されれば感知できるしね、多分。
そしたら、すぐに駆けつければいい。
軽い怪我だったらあっという間に治せるし。
それこそ、本領発揮だ。
「手は貸せないけど、側にいる。」
私は想いを込めて、イタチを真っ直ぐに見る。