第6章 逃がさないんだから…!
「おや、喉が渇いていたんですか?では私の水筒もどうぞ。」
え、どういう風の吹き回し?
鬼鮫さんが親切って逆に怖い。
「いえいえ、これで大丈夫です。」
「おやおや、遠慮する事もないでしょうに。」
やんわりと断ったのに何でまだ差し出されてるのかしら?
っていうか、何故に自分の物を薦めるの?
「いや、っていうより何で鬼鮫さんの物を?間接キスになりますよ?」
言いながら私はもう一口口に含む。
ここまで言えば引き下がるはず。
けど、何故か鬼鮫さんの反応が違った。
少し意地悪そうに笑うのを見て、内心首を傾げたんだけど、次の言葉でその意味を理解した。
「おや、イタチさんのはいいんですか?」
「!?げほっ…!げほげほっ!」
なんですと!?これイタチの!?
「…大丈夫か?」
私はぶるぶると首を振る。
気管に入ったせいで咳が止まらない。
背中を摩ってくれるのはありがたいんだけど、先に言ってほしかったよ…。
「ごめん、げほっ…。知らずに飲んじゃった。」
「構わない。その為にやったんだから。」
私は咳き込みながらも、袖口で水筒の口を拭ってイタチに返した。
「随分苦しそうですねぇ。」
にやっと笑いながら言う鬼鮫さんに、若干殺意が湧いても不思議じゃないよね。悪くないよね!
「わざと狙っといて、げほっ…。」
タチ悪いわ!
吹き出さないだけ良かったけど。
「そんなに驚く事でもないだろ。昔は一つの水筒をシスイと三人で分けあった事だってあったじゃないか。」
…いつの話をしてるんでしょうか!?
そりゃ、ちっちゃい頃そういうこともあったよ!?
今はお互いいいお年頃なんですが!?
思わずイタチを見ると、呆れた様な顔をしていた。
いやいや、私が呆れたいよ!
「くくくっ。あなた方は面白いですね。」
おい!元凶!!