第6章 逃がさないんだから…!
「何で私がそんな手の込んだ事しなきゃならないのさ。」
エニシは、意外にも心底嫌そうに答える。
それがイタチは大層な衝撃だった。
「何がどうなってその結論になったの?」
「…一族が死んだのは里のせいだと思ってるんじゃないか?」
若干呆れながら問うエニシに、イタチは問い返す。
「思ってるよ?けど、それだけだよ。だって、もっとやりようがあった筈なのに、破滅の選択肢を積み重ねた一族にも問題があったんだもの。」
イタチはこの言葉に、半ば唖然としながらエニシを見る。
言葉は出なかった。
「傲慢と過信、それが一族の敗因だと思う。」
その淡々とした様子には、一族を労わる様子は一切見られない。
只々、事実として粛々と述べている。そんな様子だった。
「一族を取り戻したいとは…思わないのか?」
一族特有の執着や怨念が感じられない事に、イタチは困惑を隠せない。
それには構う事なく、エニシはイタチの質問に少し考えた。
「そうだねぇ…。要らないかな。」
にっこり笑うエニシに、イタチは内心あんぐりとする。
「タダで返してくれるんなら返してほしいけど、そんな上手い話ってないでしょ。代償は付き物だと思うんだよね。そうまでして返してもらったって、また同じ結果を繰り返したら馬鹿馬鹿しいもん。」
冷めている。
エニシの感想は、その一言に尽きる。
イタチは困惑気味に額に手を当てた。
ならば、何だって自分に執着を見せるのか。全く分からない。
「…俺を治療したがるわけは一体何なんだ?」
心底分からない。
一族に拘りがないなら、何だというのか。
「え?振り出し?えーっと…。」
そして、やっぱりこの質問にエニシは言葉を濁す。
―何か目的がある事は確かだろうが、それが里と関わりがないのなら様子を見るか。
イタチはぐったりとしながら姿勢を崩した。