第6章 逃がさないんだから…!
ふと、自分で自分が勝手だなって思っちゃった。
私はイタチに良心が残っている事を何処かで望んでるんじゃないかって、きっと思ったんだ。
あの優しかった人が変わってしまったって、思いたくないんだと思う。
自分だって変わったのにね。
「エニシ、残るか?」
唐突にイタチに問われた。
「え、何で?ついてくよ。」
言いながらイタチを見ると、どこか心配そうな瞳とかち合う。
「お前こういうのは嫌だろう?」
「…?べつに嫌でもないよ?世の中勝った方が正義だし。」
勝てば官軍、負ければ賊軍。
日本でだってそんな言葉がある。
力が全てとは言わないけど、ここは力があれば大概どうとでもなる世界なのだ。
昔ならいざ知らず、この年になってまで甘っちょろい事を言うつもりはない。
けど、イタチは少し驚いた様に目を瞠った。
次いで視線を落としてしまう。
「…ねえ、何でイタチが悲しそうにするの?」
「…いや、何でもない。」
そのまま、ふいっと顔を背けられた。
……。
何だろう。
……。
もしかして、一族の事を負い目に思ってる…?
まぁ、そりゃそうか…。
でもね、イタチ。
あなたが気にする事ないんだよ。