第6章 逃がさないんだから…!
「いやいや、知ってるって。イタチはビジュアル的にOKなのよ。鬼鮫さんが持つと面白いんだって。」
「誰が何を持つと面白いんですかねぇ。」
え!?
急に割り込んできた声に、ばっと後ろを振り向いたら、いつの間にか鬼鮫さんが立っていた。
笑ってるけど怒ってる!?
「あー…、いやね、だから…。」
やべぇ、どこから聞いてたんだろう?
あたふたとしていると、鬼鮫さんが冷たく笑ったまま、口を開いた。
「私は程々に甘い物は好きですが、綿飴は嫌いです。」
全部聞かれてたよ…。
冷や汗だらだらだよ…。
「申し訳ありませんでした。」
私は潔く土下座した。
ってかするしかなくない?
ほんとにいつ入ってきたの!?
「まったく、大きなお世話ですよ。」
鬼鮫さんは大きくため息をついた。
ははは…。ですよねー。
「それはそうと、依頼が入りましたよ。」
へぇ、仕事かぁ。
ちらっとイタチを見ると、一瞬ほんの少しだけ気落ちした様な表情を見せた。
けど、気のせいかと思うくらいすぐに無表情に戻る。
「そうか…。それで、内容は?」
イタチが聞くと、空気が引き締まる。
「敵対勢力の制圧が希望の様ですよ。自分達に有利となる様黙らせたいんだとか。」
…うわあ。一方的ですね。
イタチは、それを聞いても顔色一つ変えない。
「因みに歯向かう様なら生死は問わないそうです。」
こういう事言う輩は大概碌でもないって相場は決まってる。
生死問わず人をねじ伏せようって言うんだもんね。
昔のイタチだったらいい顔しなかったろうな。
でも今は…。
「分かった。期限は?」
「早ければ早いほど。」
やっぱり、どこ吹く風、といった様に怒るわけでも眉根を寄せるわけでもなかった。