第6章 逃がさないんだから…!
それから、気分が上向いたらしいイタチは、私の治療を受ける気になったらしい。
彼の気持ちは未だに読めない。
何が良かったんだろう?
気にはなるけど、臍を曲げられたら面倒だから気にしない事にしよう。
うん、そうしよう。
「とりあえず。これ食べてみてくれる?」
私はリュックから小分けにしてあった兵糧丸をイタチに差し出した。
「あ、鬼鮫さんも良かったらどうぞ。」
差し出すと、疑いながらも黙って受け取った。
「これは…兵糧丸か?」
「そうだよ。」
「何故色が黄色っぽいんだ?」
兵糧丸と言えば黒に近いのが普通。
それを考えれば、怪訝に思うのも無理はない。
「これ、本当に大丈夫なんですか?」
鬼鮫さんみたいに疑われても驚きはしない。
「味を改良しつつ、キビモチをふんだんに入れた結果なんで、性能は折り紙付きです。」
私が言うと、二人はちらっと互いを見た後、恐る恐る少し齧る。
まず先にイタチの表情が和らいで、鬼鮫さんも徐々に和らいでいく。
鬼鮫さんって見かけによらず警戒心がすごく強い人なのかも。
「これ、悪くないな。」
イタチが一つ二つと食べ進めていく。
「でしょう?今回は運良く大量にキビモチが手に入ったから更に良くなったの。」
「確かにほんのり甘味があるな。」
「兵糧丸ですよ?味の良し悪しなんて要らないでしょう。」
そう言いつつも手が止まってないですよ、鬼鮫さん。
「でも、どうせ食べるなら美味しい方がいいじゃないですか。食欲がない時だってあるかもしれないし。」
私が言うと、イタチが小さく頷いた。
「そうだな。それにいつものよりもさっくりしていて食べやすい。」
「そこも改良のポイントなの。固すぎるのも食べづらいんだよね。」