第6章 逃がさないんだから…!
「だから、私の何が気に入らないん?」
「お前が気に入るとか入らないとかっていう問題じゃない。お前の治療を受ける気はないって言ってるんだ。」
場所を変えて、宿に入った私達はさっきからずっとこの言い合いをしている。
いいじゃん、ヤブ医者の代わりに私がタダで治療しようって言うんだからお得じゃん。
乗らない手はないと思うんだけど。
本当に分かんない。
イタチも平行線が疲れたのか、片膝を抱えて顔を埋めてしまう。
「そもそも何故俺に拘る?医者をやりたいなら患者など探せば他に幾らでもいる。何も俺でなくてもいいだろう?」
なんだか、それ聞いてちょっとがっかりした。
そんなに私がイヤかね。
それでも引く気はないけどね。
「兄ちゃんとの約束だから。イタチの病気を治す、それが最期の約束だもん。」
私は医者がやりたいわけじゃない。
患者なら誰でもいいわけじゃない。
イタチだから治そうって気になるのよ。
「約束を果たすことが私の生きる道なの。」
そう言ったら、驚いた様な顔をしてイタチが私を向いた。
ちょっと重かったかしら…?
でも、約束は私にとっては道標なのだ。
「…それに、私は一度定めた目標を簡単には覆さない。諦めが悪いって知ってるでしょ?」
この目的を果たせないんなら、正直これからどう生きていけばいいのかよく分からない。
「お前…。」
イタチは何故か言い淀んで、視線を逸らしてしまう。
それから、私達の間に無言が流れる。
これ以上はもう説得できる言葉がないよ。
「悪い話ではないと思いますが?」
それまで黙って聞いているだけだった鬼鮫さんが話に入ってきた。
っていうか意外。味方してくれるんだ。