第6章 逃がさないんだから…!
「私がその提案を受けると思うんですか?」
「受けると思いますねぇ。暁がどんだけの組織か知りませんけど、イタチは主戦力と言えるほど強いんじゃありませんか?イタチの代わりって簡単に探せるんでしょうか?」
エニシが問うと、鬼鮫は薄く笑う。
「私の提案は、謂わばイタチを守る行動です。それは巡り巡って暁にとっては戦力維持に繋がると思いますけどね。違います?そして、鬼鮫さんは万が一怪我した場合に治療を受けられるという保険を手にするわけです。」
お得でしょ?と言うエニシは、ある意味頼もしい、とイタチは思う。
鬼鮫相手に堂々と交渉を持ちかける度胸は見上げたものだ。
この世に彼相手に渡り合おうという命知らずはどれだけいる事か。
きっと数えるほどしか見つからないだろう。
鬼鮫もそれが楽しかったのか、ニヤリと笑った。
「いいでしょう。確かに今イタチさんに倒れられたら、暁としては大打撃ですからね。ヤブ医者も腕には限界があるでしょうし。」
「さすが鬼鮫さん。ご理解いただけた様でなりよりです。」
エニシも合わせた様にニヤリと笑って右手を差し出した。
鬼鮫が黙ってその手を握ると、エニシはぎゅっと握って一度上下に軽く振る。
「じゃ、交渉成立って事で。」
そして、そのままこちらを向いたエニシの顔は、ニタリという表現が似合う程、悪い顔をしていた。
なまじ顔がシスイそっくりなのが、余計に怖く見える。
「さてと、イタチ君?これで簡単には逃げられないわよ。大人しく治療を受けなさいね。」
―やはり、こうなったか…。
イタチは疲れた様にため息をついた。