第6章 逃がさないんだから…!
「言ってるでしょうが!!ドクターストップです!!絶対安静です!!今すぐ…」
ゴン!!
言い終わらない内にエニシの脳天に衝撃が走り、彼女はへろへろと頭を押さえてしゃがみ込んだ。
「少し頭を冷やしなさい。」
鬼鮫はゲンコツを落とした手を振りながら、またもや大きくため息をつく。
「そうですね、確かに私はあなたが言うようにイタチさんの相方です。それも仕事上のね。」
それを聞いたエニシはゆるゆると鬼鮫を見上げた。
その顔はいささか驚いた様にも見える。
「ですから、どんな状況でもイタチさんの味方はしますよ。ですが、あなたの味方はしません。これからもずっとね。」
当然でしょう?と言いながら、鬼鮫はしゃがんでぐっとエニシに顔を近づける。
「私が裏切り者なんて成り得ないんですよ。最初から最後まで、あなたにつき従う義理も責務もないんですから。私を信じるあなたが馬鹿なんですよ。」
拒絶とも取れる残酷な物言いだと、イタチは思う。
エニシもショックだったのか、呆然としている。
少し可哀想そうにも思うが、これで引き下がってくれるなら、その方がイタチには都合が良かった。
「頭は冷えたようですね。」
「そうですね。だいぶ冷えました。」
エニシはそう言うと、何故かニヤリと笑う。
「なら、契約をしましょう。私が提供するものは医療です。鬼鮫さんが怪我したら私が治します。自然治癒より治りは断然早いですよ?薬だって要らないし。どうです?」
「は?」
鬼鮫もまさか、そう返ってくるとは思わなかったのだろう。
唖然とした表情でエニシを見返していた。
「その代わり、鬼鮫さんは私がドクターストップを出したらちゃんとイタチを止めてください。それと、黙っていなくなるのはやめてください。探すのすっごく大変なんで。」
そう難しい事じゃないでしょ?と不敵に笑うエニシを見て、イタチは思わず頭を抱える。
―こいつは転んでもタダでは起きないタチだった…。