第6章 逃がさないんだから…!
レモンイエローの薄手のロングジャケットに、白のTシャツ、紺色のスパッツに忍サンダル。
どう見ても二日前に見た姿そのままだった。
ガラガラガラ!!
イタチは反射的に開けた戸を閉める。
が…。
ガシッと戸を手で押さえられ、最後まで閉める事が出来ない。
「……!!」
イタチは慌てて閉めにかかったが、力が拮抗している様でそこから先に動かせない。
「い〜た〜ち〜!」
彼は初めて聞くエニシの地を這う様な声に、思わず力が緩みそうになった。
「な、ん、で!に、げ、る、の、よ!?」
一文字一文字にこの上ない怒りが込められている様で、イタチの閉める手に再び力が入る。
「なんとか言いなさいよ!!」
だが、エニシの方が力比べは上手だった様だ。
ぐぐぐっと力負けし、戸が変形しながらも開いていってしまうのを見て、イタチは慌てて手を離して後退る。
その瞬間、バン!!とけたたましい音と共に戸が開き、仁王立ちに憤怒の形相をしたエニシが現れた。
戸は、ガタガタと無残な音を立てて本来のレールから外れてしまう。
「言ったはずよ。治療はまだ終わってないって。」
ダン!と敷居を跨ぐエニシに、イタチは反射的に一歩下がる。
「お、お前…、何で…?」
「その質問に答えてやるほど私は親切じゃないわよ。」
そう言うと、彼女はぐぐっと体勢を沈めて、瞳が写輪眼の赤に染まる。
―何をする気だ…?
「大人しく捕まりなさい!!」
言うが早いか、ダッとイタチに向かって駆け出してきた。
だが、彼とて手をこまねいている筈もなく、さっと内扉の向こう側へ戻り、ダン!!と戸を閉める。
が、やはり閉じ切る前にガッと手が差し入れられた。
考えるまでもなく、エニシだ。
「逃さないんだから…!」
そこから、またも一進一退の攻防が始まってしまう。
―どうしてこうなった!