第6章 逃がさないんだから…!
「ひっ!た、たすけてくれ…!!」
惨めにも命乞いをする男を、イタチは冷めた目で見遣る。
この男を鬼鮫が殺せば任務は完了だ。
「助ける事は出来ません。あなたにはその心当たりがおありでしょう?」
領民を虐げ、財を搾取する領主。
これがこの男の正体だった。
「わ、わるかった…!これからは悔い改める。だからどうか…!」
「それを我々に言って何になるんです?」
「そ、それは…。」
言い淀む領主にあの男の影がチラついた。
そしてふと思う。
あの男も追い詰めれば、この男の様に這いつくばって命乞いをするだろうか、と。
―…いや、あの男がする筈がないな。
シスイを殺し、一族を皆殺しにする様促したあの男、ダンゾウ。
うちは一族に対する罪悪の感情すらなかっただろう。
自身にとっての要る者と要らぬ者の線引きがあり、うちは一族は要らぬ者だったのだ。
どうして、うちは一族だったのだろう、と取り留めのない事が頭をよぎる。
白眼の日向一族は、今も木の葉では健在だ。
槍玉に上がった事すら無い。
ーうちはと日向で何が違う?
やや、八つ当たりに近い感情が込み上げるのを感じ、イタチは知らず詰めていた息を小さく吐き出した。
―分かっている。何もかも…。
うちはは里の中で、排他的で傲慢に近かった。
そして、それが最強の瞳術を恐れる人々の心情と重なり、孤立を生んだ。
そこで一族は歩み寄る道を探すべきだったのだろう。
里の中で、”木の葉の一員”として生きていくのであれば、他を見下すのではなく、共存を考えるべきだったのだ。
だが、一族の殆どの者がそれを考える事も、踏み出す事も出来なかった。
いや、その気が無かった、と言った方が正しい。
シスイとエニシを除いては…。