第3章 勝者と敗者
もう一度確認するが見当たらず、何処に行ったのかと内心オロオロしているとペアが出来たようで齋藤コーチは嬉しそうにしていた。
齋藤「では花鈴ちゃん、どうぞ」
花鈴「……今からシングルスの試合を開始します」
大石「えっ、シングル?」
菊丸「ダブルスじゃ無いの?」
全員、ダブルスの試合をするのだと思っていたようで少し動揺していた。すると齋藤コーチはダブルスとは言っていないと応えた。
齋藤「負けた方は脱落という事で。そう今組んだパートナーと戦ってね」
仲間同士で戦い相手を蹴落とし合う事でメンタルの向上を図るメニュー。これに対し「そんな事は出来ない」と海堂先輩は叫んだがコーチは無視して試合の順番を決めていく。
海堂「姫宮もそれで良いのか!」
花鈴「……」
私は何も言えずに俯いでしまった。本来ならこんな事はさせたく無いが、日本代表として育成するのであればメンタル向上は必須。それにコーチのメニューを私が邪魔する訳にもいかなかった。
齋藤「あ、応じないペアも脱落とします。それから……彼女に言っても無駄ですよ」
コーチには逆らえないから、と不敵な笑みを見せた齋藤コーチに彼等は試合をする事を受け入れる。
乾「回避できる確率、0%」
河村「生き残る為には勝つしか無いって事か……」
不二「やるしか無いって事だね」
そうして試合が始まり、覚悟を決めたように次々と争い始める。齋藤コーチはモニタールームへ戻ると言い「後は任せた」と一つのコートを指差した。
齋藤「聞き分けのない子が1人いるからさ」
そう言い残し去って行ったコーチに私は指差していた方へ行くと、菊丸先輩と大石先輩が試合をしていた。
菊丸「ほんじゃ、いくぞー!」
コトン…
菊丸「ありゃりゃ〜また失敗しちゃった」
大石「……」
試合を見ると菊丸先輩がわざとサーブを失敗している姿が目に入って来た。
不二「きっと互いを蹴落とし合うなんて出来ないんだ」
乾「2人はシンクロが使える唯一の中学生だからな」
花鈴(……でも優しいだけじゃ、きっと)
そんな事を考えていると、菊丸先輩の行動に大石先輩も気付いていたようで「こんな事をしても無駄だ」と言った。
菊丸「でもどっちかが負けたら、もうダブルスが……」
大石「どっちかが負けたらだらう。悪いが今の俺はお前に負ける気がしない!」