第6章 名前呼び
徳川「姫宮」
花鈴「あ、徳川せんぱ……」
バサッ
徳川「着ておけ、風邪を引く」
花鈴「ぬ、濡れちゃいますよ」
徳川「構わない」
お礼を言いジャージの上着を羽織った私は、再び自室へと歩きだすと何故か徳川先輩も着いて来た。
花鈴「先輩の部屋ってあっちじゃ……」
徳川「自室まで送る」
花鈴「あ、ありがとうございます」
優しいなと思いながら暫く無言で歩いているとあっという間に目的地に着いてしまった。
花鈴「送って頂きありがとうございます。あ、お礼を……」
徳川「礼はいい、俺がそうしたかっただけだ」
花鈴「でも、この間も助けて貰ってますし」
それは徳川先輩を探している時、高校生2人に絡まれてしまい困っていた所を助けて貰った件。偶然とはいえ今回を含めて2回も助けて貰ったのだ、「礼はいい」と言われたが何かお礼をしたいと私は考える。
徳川「……なら名前で呼んでくれないか、知っているだろう」
花鈴「えっと、カズヤ先輩ですよね?」
徳川「そうだ、花鈴」
本日2回目、名前を呼ばれて思わずドキッとして目を逸らすと「フッ」と小さく笑われた。
花鈴「わ、笑わないで下さい!」
徳川「すまない、花鈴が可愛く見えてな」
花鈴「な、何言うんですか‼︎」
可愛いと言われお世辞だとしても照れてしまった私は「部屋に戻ります!」と赤くなった顔を隠すように入り口へと体を向けると、ギュッと手を掴まれ先輩の方へと体が引っ張られていく。
徳川「これからは名前で呼んでくれ」
花鈴「〜〜〜っ///」
徳川「おやすみ、花鈴」
耳元で囁かれドキドキしない訳も無く、パッと体が離れると私は何も言わずに全力疾走で部屋へと戻り蒸れた服のままベッドへと倒れ込む。
花鈴「もう……リョーマ君も、カズヤ先輩も何なのよ〜‼︎」
枕に顔を埋めながら2人にドキドキしてしまう。名前呼びされただけでこんなに照れると思わなかった。それにしても急に名前呼びなんて2人はどうしたのだらう。
花鈴「……はぁ……お風呂に入ろ」
考えても分からなかった私はお風呂に入って気持ちを切り替える事に決め立ち上がる。
花鈴「あ……ジャージ、明日返さなきゃだし洗濯機も回しに行こうっと」
この合宿所は設備が色々揃っており洗濯機も乾燥機付きで本当に便利だ。私は着替えとジャージを持ち、お風呂とランドリーへと向かったのだった。