第5章 マネージャー
地図を見ながら森に入ってから2時間、花鈴は手元の地図と目の前にある崖を交互に見ていた。
花鈴「……これを登れという事かな」
ぽつりと呟きながら崖の上の方を見る花鈴を遠くからドローンカメラが見ている事も知らずに登り始める。
齋藤「さて、どれくらい掛かるので……えっ、嘘⁈」
黒部「ほう、これは中々」
モニターを見ていた齋藤と黒部は花鈴の登る速さに驚いていた。小柄で体重の軽い花鈴は瞬時に登れる足場を判断し頂上へと登っていく。
齋藤「これはまた……流石としか言えないね」
黒部「あの姫宮さんの娘さんですからね、これくらいは余裕なのでしょう」
そんな事を話している内に花鈴は頂上へと到着。伸びをしよあとすると「待っていたぞ」と髭の生えた堅いのいい男が酒を片手に声を掛けてきた。
三船「三船だ。娘、着いて来い」
花鈴「は、はい」
言われるままに着いていくと小さな小屋の前で見知った顔触れが泥だらけの姿で集まっているのに気付いた花鈴。
花鈴「……リョーマ君に桃城先輩?」
リョ「え、姫宮?」
桃城「なんでお前が此処に」
お互いの出会いに驚いていると三船が「黙れ貴様ら」と怒鳴り、花鈴に特別練習をさせる為に呼んだと言い放つ。
三船「貴様らは崖を下りて水を汲んで来い」
人数分の水桶が投げられ「早くしろ」と言われる中、大石が「彼女はマネージャーですよ」と物申した。
大石「なんで練習を……」
三船「出来ないとでも言いたいのか、このガキが」
宍戸「いや、そうとは言ってないが」
三船「……そうか、フンッ!」
三船は花鈴に向かってラケットを投げる。そして花鈴が受け取った瞬間、10個のボールが花鈴に向かって飛んできた。
河村「危ない!」
花鈴「はっ……‼︎」
パパパパパパパパンッ!
河村「えっ……」
謙也「10個同時に打ち返しおった……」
10個のボールを同時に打ち返した事に驚く一同に花鈴の顔は浮かない表情をしていた。三船は「さっさと水汲んで来い」と叫び彼等はその場を後にした。
三船「お前、確か姫宮の娘だな」
花鈴「……はい」
三船「10球以上、同時に打てるようになれ」
強くなければ意味がないと言われた花鈴。「なんで私も?」という顔で三船を見ていたが教えてくれる訳もなく話を進めていく。