第5章 マネージャー
この日、花鈴は1人である人物を探していた。それは早朝に黒部と齋藤にある事を指示されたからだ。
花鈴「うーん……探せと言われてもな、何処にいるんだろう」
施設内の地図が描かれた看板を眺めながら悩んでいると、高校生2人に「どうしたの?」と声を掛けられた。
「お、めっちゃ可愛いじゃん!」
「俺達と少し話しない?」
花鈴「……失礼します」
なんだがしつこそうな感じた花鈴は挨拶をしその場を去ろうとすると手を掴まれしまった。
「そんな事言わずにさー、俺達と遊ぼうぜ」
花鈴「急いでるんで離して下さい!」
「チッ、ノリ悪いな。こっち来いって言ってんだよ」
花鈴「っ⁉︎」
掴まれた腕に力が込められ痛みが走ると同時に恐怖が込み上げ目を瞑る花鈴。それに気付いたのか腕を引き何処からに連れて行こうとする高校生2人。
?「おい、何している」
「あ、お前は……1番コートの」
?「……失せろ、こんな事をする為に合宿にいるならな」
「……い、行こうぜ」
「お、おう……」
誰かが助けてくれたようで高校生2人は手を離し去って行った。「もう目を開けろ」と言われ花鈴はゆっくり目を開けた。
徳川「……大丈夫か」
花鈴「と、徳川先輩?」
助けてくれたのは1番コート所属の徳川カズヤ。知っている顔を見た花鈴はヘナヘナと地面に座り込む。
徳川「……立てるか」
花鈴「す、すみません。……あの!」
徳川「なんだ」
花鈴「今お時間……大丈夫ですが?」
手を差し伸べられて立ち上がった花鈴は徳川に用があって探していたと話すと「着いて来い」と言われ歩きだす。後を追いかけていくとコートに連れて来られ近くのベンチに腰を下ろした。
徳川「ここに座れ。で、用とはなんだ」
花鈴「あ、はい……私と試合してくれませんか?」
徳川「試合だと?」
花鈴「実は……」
早朝、2人のコーチから徳川と試合をしろと指示された花鈴。元Jr.テニスの実力がどれ程のものかみてみたいという理由らしく、戦うなら徳川カズヤが適任だと言われた事を話す。
花鈴「という訳なんです……ダメでしょうか?」
徳川「事情は理解した。だが1つ聞いてもいいか」
花鈴「はい、何ですか?」
徳川「何故テニスを辞めた」
花鈴「えっ?」
目を丸くする花鈴に徳川は「テニスしていただろ」とプロ並の実力を持っているだろうと言う。